部分矯正ができないケースとは?
2022.05.30更新
歯並びによっては部分矯正治療の範囲を超えている場合があります。ここでは、よくある「簡単そうで、思ったより事態は深刻な3つの歯並びを解説していきたいと思います。下の3つのパターンに当てはまらない方は部分矯正治療で大きな効果を得る事が期待できます。
上の歯だけ矯正して前歯を引っ込めたい
これは、一番良くある部分矯正の相談内容です。多くの患者さんは上の歯列のみの治療で治ると思っていることが多いです。ですが、せっかく期待して来られた患者さんには酷なのですが、「全体矯正が必要です」と伝えなくはなりません。
前歯を後ろに下げるには、アンカーといって引っ張るための固定源が必要です。主に前歯しか装置を装着しない部分矯正では対応しておりません。特に「出っ歯」の方に上の前歯が出ているから、上のみの装置を装着して治療したいというパターンもありますが、通常はできません。「出っ歯」は上下の「かみ合わせ」の問題も混在しているからです。かみ合わせに問題があるという事は上下の歯に矯正装置をつけなくてはなりません。ですから、「出っ歯」も治したい場合は上下全体矯正になります。
前歯のスペース不足が3mm以上を超えている
どうしても部分矯正を希望の場合は前歯のデコボコを揃える事は可能ですが、抜歯や遠心移動といったスペース作りができないため、前歯を引っ込める事ができません。出ている方の前歯に合わせて後ろにある歯を揃えるイメージです。
目に見える上の前歯の段差だけを治したい方は多いのですが、段差を取るには歯を並べるスペースが必要です。部分矯正でのスペースの作り方はIPR(ストリッピング)といって、歯にヤスリをかけて隙間をかき集める方法になります。
前歯のIPRを積極的に行って得られるスペースはせいぜい3mmが限界です。それ以上を超えたスペース不足は、歯列拡大や小臼歯抜歯が必要になってくるため上下顎全体矯正になります。
目安としては、前から見て2番目の歯が半分くらい隠れている場合は、スペース不足が3mmを超えている可能性が高いです。このようなケースは、八重歯やクロスバイトといった噛み合わせに問題がある状態になっている事が多く、全体矯正治療が必要になります。特に八重歯の原因となる犬歯は歯根が長く、部分矯正で正しい位置にコントロールする事は難しいと言えます。
噛むと下の前歯が見えない深噛み
あまり聞きなれない悪い歯並びの種類ですが、「過蓋咬合」といって下の前歯が上の前歯の根元を噛んでいる噛み合わせです。これは、部分矯正治療にて上の歯並びを治したとしても、後戻り防止用のフィックスリテーナーを歯の後ろに装着できないため、治療の予後が非常に悪いです。このようなケースも上下顎全体矯正にて前歯のかみ合わせを治す必要があります。
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